金杉憲治大使への抗議は習近平の指示か 強面外交の裏にひそむ「経済リスク」
中国が対日強硬姿勢を強めている。今後、経済制裁や、トヨタやユニクロ、ソニーなど日本製品不買という、“民間ボイコット”にまで発展しかねない。
問題の起点は7日の台湾有事に関する国会答弁。高市早苗首相は、中国が武力を行使すれば、存立危機事態になりうると発言した。翌8日に
薛剣
せつけん
・駐大阪中国総領事が「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」とSNSに書き込んだことで、日本国内で薛氏への批判が高まった。
だが、中国は謝罪するどころか、13日に外交部が金杉憲治駐中国大使を呼び出し抗議、翌日に日本旅行自粛を国民に呼びかけた。批判への逆ギレにも見えるが、中国の論理は異なる。
「外交儀礼としての抗議を超えたレベルだ。政治はもちろん、ビジネスへの影響も避けられない」
上海市で日本製品の輸入販売業を営む中国人A氏は嘆いた。大使の呼び出しを伝える、国営の新華社通信の記事には「奉示召見」(上級者の指示に基づき出頭を求める)の文言がある。つまり、抗議はより上の意志、おそらくは習近平総書記の指示に基づくことを暗示している。
トップが号令を下せば、その意をくんだ省庁、地方政府、国有企業が各々報復を始める。すでに国有航空大手3社は日本便の無料キャンセルを受け付けると発表した。民間も例外ではない。売国奴と批判されることを恐れた企業、人々が日本との協力をひかえる連鎖もおきかねない。
「福島第一原発処理水の海洋放水でも、中国人インフルエンサーが日本製品の広告を拒否したことで売上が落ちた。回復までには半年以上かかってしまった。その再来となりそうだ」と、A氏は頭を抱える。
中国は米中首脳会談で、関税の10%引き下げ、輸出管理規制拡大の暫定停止、船舶寄港料の凍結などの譲歩を得た。中国の譲歩はレアアース輸出規制の暫定停止や米国産大豆の購入など許容できる条件ばかり。まさに“完勝”だ。米国が動けない今は、日本への圧力を高め譲歩を引き出す絶好の機会とみている。
一方で国内経済はお寒い限り。国家統計局が発表した10月の経済統計は消費、投資、純輸出のいずれも下落している。2021年の不動産価格下落から始まった景気低迷はデフレ、消費縮小、そして先行き不安からの投資減速へと拡大している。頼みの輸出も10月は前年同期比1.1%減。トランプ関税の影響に加え、地政学的リスクを踏まえ中国をサプライチェーンから外す動きが加速している。自信満々の強面外交は外資離脱を後押しし、足元の経済をさらに悪化させるリスクも秘めている。
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source : 週刊文春 2025年11月27日号